感染性腸炎とは?
感染性腸炎は、ウイルス、細菌、寄生虫などの病原体が原因で引き起こされる病気の総称です。主な症状として、腹痛、下痢、嘔吐、発熱などが挙げられます。これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたすことがあり、特に乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人々においては重篤化するリスクがあります。感染性腸炎は一般的に急性の症状を呈し、迅速な診断と治療が求められます。
原因
感染性腸炎の原因は多岐にわたり、主に以下の3つの病原体によって引き起こされます。
ウイルス
ノロウイルスやロタウイルスは、特に冬季に流行しやすく、集団発生を引き起こすことが多いです。感染力が非常に強く、少量のウイルスでも感染を引き起こすことがあります。
細菌
サルモネラ菌、カンピロバクター、大腸菌(特に腸管出血性大腸菌O157など)が代表的な原因菌です。生の肉や卵、汚染された水や食物が感染源となることが多く、食中毒の原因として知られています。
寄生虫
ランブル鞭毛虫やクリプトスポリジウムなどの寄生虫も感染性腸炎の原因となることがあります。これらは、特に発展途上国での感染が多く、不衛生な環境での水や食物摂取がリスクとなります。海外旅行中に感染して、帰国後に発症するケースもありますので、渡航歴がある場合は注意が必要です。
診断
感染性腸炎の診断は問診で特定されることが多いため、患者の症状や感染経路、流行の状況を確認して、総合的に評価します。必要であれば、下記の検査を追加で行います。
便培養
便を採取し、顕微鏡で病原体の有無を確認します。細菌培養やウイルスの抗原検査、寄生虫の確認などが行われます。
血液検査
炎症の程度を確認するため、血液中の白血球数やCRP値(C反応性蛋白)を測定します。また、重症の場合には、電解質バランスや腎機能を確認します。
画像検査
腹部のX線やCT検査が行われることがありますが重症例に限られます。
内視鏡
腸炎以外の炎症性疾患が疑われる場合、鑑別のために下部内視鏡検査を行う場合があります。
治療
感染性腸炎の治療は、原因となる病原体に応じて異なりますが、基本的な治療方針としては、十分な水分摂取と腸管の安静で自然治癒します。症状がつらい場合には、症状を軽減するための薬を処方する場合があります。症状を悪化させる可能性のある治療法や、家族への感染を防ぐための対策について正しく理解しておくことが大切です。
水分補給
感染性腸炎では、下痢や嘔吐により体内の水分と電解質が失われるため、まずは適切な水分補給が最優先されます。軽症の場合は経口補水液なども有効ですが、重度の脱水症状が見られる場合は、点滴による補液を考慮します。
対症療法
発熱や腹痛に対しては、解熱鎮痛剤を使用することがあります。止痢薬は、下痢を一時的に止める作用がありますが、感染性腸炎の場合、使用は推奨されません。止痢薬の代表的な成分には、腸の動きを抑制することで下痢を止める薬がありますが、この薬効は腸内に滞留する病原体や毒素の排出を妨げ、症状を悪化させる可能性があります。特に細菌性腸炎では、病原菌が腸内に留まり、重篤な合併症を引き起こすリスクが高まるため、慎重に使用します。
抗菌薬の使用
抗菌薬は細菌を標的にする薬であり、細菌性腸炎の治療には有効ですが、ウイルス性腸炎には効果がありません。ウイルス性腸炎の原因となるノロウイルスやロタウイルスには、抗菌薬は効かず、むしろ不要な抗菌薬の使用は、耐性菌の発生を促すリスクがあります。従って、ウイルス性の感染性腸炎では、抗菌薬の処方は通常行われません。治療は主に対症療法(水分補給、安静)に頼ることになります。
隔離と予防
ノロウイルスやロタウイルスなど、感染力の強い病原体による感染性腸炎の場合、家庭内での感染拡大を防ぐために、以下の点に注意してください。
手洗いの徹底
患者やその家族は、トイレ使用後、食事前後、嘔吐物や下痢便に触れた後は、必ず石鹸と流水で手をよく洗いましょう。
消毒
患者が使用したトイレや便座、ドアノブ、洗面台などは、次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒液で定期的に消毒します。ウイルスや細菌は長時間生存することがあるため、消毒が欠かせません。
食器・タオルの共用を避ける
患者が使用した食器、タオル、衣類は他の家族と分け、使用後はしっかり洗浄・消毒します。
嘔吐物や下痢便の処理
嘔吐物や下痢便は、使い捨ての手袋とマスクを着用して処理し、処理後は手洗いを徹底します。処理した場所も、適切な消毒を行いましょう。
おわりに
感染性腸炎は、適切な治療と感染防止策によって症状の改善が期待できる病気です。当クリニックでは、消化器病専門の医師が丁寧に対応し、適切な治療を行います。感染性腸炎の症状でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。