機能性ディスペプシアとは?
機能性ディスペプシアは、胃の不快感や痛みを引き起こす消化器疾患です。胃カメラ検査や大腸カメラ検査を行っても、胃や腸などに炎症や潰瘍、ポリープ、がんなどの明らかな異常がないにもかかわらず、食後の膨満感や胃の痛み、胸焼けなどの症状が持続します。
内視鏡検査などで確認しても、潰瘍や腫瘍のような異常(器質的疾患)が見られないため、「機能性」と呼ばれています。日本人の約10〜20%が機能性ディスペプシアに悩んでいるとされ、特にストレスや食生活の影響が大きいと考えられています。
原因
機能性ディスペプシアの明確な原因はまだ完全に解明されていませんが、以下の要因が関連していると考えられています。
胃の運動機能異常
通常、食べ物が胃に入ると、胃はリズミカルに収縮して消化を促しますが、機能性ディスペプシアの患者ではこの運動がうまくいかず、食べ物が胃に長く滞留することがあります。これにより、胃が張ったり不快感が生じます。
胃の知覚過敏
機能性ディスペプシアの患者では、胃が通常の状態よりも敏感になり、少量の食べ物やガスでも痛みや不快感を感じやすくなります。ピロリ菌感染なども関与が考えられています。
ストレス
精神的なストレスや不安が、胃腸の機能を乱す一因となることがあります。自律神経のバランスが崩れることで、胃の運動や消化機能が低下することが知られています。
食生活や生活習慣
脂肪分の多い食事、過食、喫煙、アルコール摂取なども機能性ディスペプシアの原因として挙げられます。また、速いペースで食事を摂ることや食事時間が不規則な場合も、症状を悪化させる要因となります。
症状
機能性ディスペプシアの主な症状には以下のようなものがあります。
胃の痛みや灼熱感
胃の上部に持続的な痛みや焼けるような感覚を感じることが特徴です。これらの痛みは空腹時や食後に強くなることがあります。
食後の膨満感
少量の食事でも、食後に胃が膨れたような感覚や、食事が消化されずに胃の中に残っている感じが続くことがあります。
早期満腹感
食べ始めてすぐに満腹感を感じ、食事を十分に摂ることができなくなることがあります。
胃もたれや胸やけ
食後の消化不良感や、胃酸の逆流による胸やけを感じることもよくあります。
これらの症状は数週間から数か月間続くことが多く、日常生活に支障をきたすことがあります。しかし、症状があっても、内視鏡などで確認すると胃や腸に目立った異常は見られません。症状が続く場合は、まずは胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
診断
機能性ディスペプシアの診断は、主に除外診断と呼ばれる方法で行われます。これは、他の疾患(胃潰瘍や胃がん、逆流性食道炎など)を除外した上で、機能性ディスペプシアと診断する方法です。以下の検査が行われることが一般的です。
問診と症状の確認
症状の出現時期、頻度、食事や生活習慣との関連を詳しく確認します。
内視鏡検査
胃や十二指腸に明らかな病変がないかを確認するために、内視鏡を用いて直接観察します。
ピロリ菌検査
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染があるかを確認します。ピロリ菌が関与している場合は、除菌治療が効果を示すことがあります。
治療
機能性ディスペプシアの治療は、症状の軽減と生活の質を向上させることを目的に行われます。治療法には以下のものがあります。症状の緩和を薬物療法で行い、生活習慣の改善で症状の増悪や再発が起きにくい状態を保つようにします。
薬物療法
機能性ディスペプシアの治療は、症状に応じて複数の治療法を組み合わせます。まず、プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、胃酸の分泌を抑えて胸やけや胃の痛みを和らげる効果があります。また、消化促進薬は、胃の動きを良くし、胃もたれや膨満感を軽減します。さらに、抗不安薬や抗うつ薬は、ストレスや不安が症状に影響する場合に効果があり、胃腸の知覚過敏を改善することがあります。加えて、漢方薬も有効で、身体全体のバランスを整えながら症状を緩和する役割があります。
このように、治療はPPIや消化促進薬、精神的安定を促す薬剤、漢方薬を適切に組み合わせて行います。ピロリ検査で陽性の場合は、除菌治療を行うことで症状の緩和を期待できます。
生活習慣の改善
食事は少量ずつ、回数を増やして摂るように心がけ、胃腸への負担を軽減することが重要です。胃に負担のかかる食事は控え、脂肪分の少ない食事を選び、食後にすぐ横にならないようにします。
喫煙や過度の飲酒、カフェインの摂取を控えることも重要です。
おわりに
機能性ディスペプシアは、適切な治療と生活習慣の見直しによって症状の改善が期待できる病気です。当クリニックでは、熟練の内視鏡医が行う苦痛の少ない胃カメラ検査・大腸カメラ検査を提供しております。消化器病専門の医師が丁寧に対応し、適切な治療を行います。機能性ディスペプシアの症状でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。